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2025.11.24

自費検査についてのお話 〜“リスクを知ること”と“行動すること”〜

今回は、自費で受けられる健康系の検査について、日々の診療で感じていることを少しお話しします。
あくまで僕個人の見解であり、特定の検査を批判したり否定したりする意図はまったくありませんので、その点はご理解いただければと思います。


「将来のリスクを評価する検査」について相談を受けました

先日、患者さんから
「将来の心血管疾患のリスクを調べる検査を受けた方が良いのか?」
という相談がありました。

その検査では、現在の血管の状態を指標化し、

  • 数値が高いと脳梗塞のリスクが約○倍
  • 心筋梗塞のリスクが約○倍
    といった“発症リスクの上昇”が報告されています。

運動習慣があって、血圧や血糖、脂質が整っている方でも、心筋梗塞がゼロになるわけではありません。
そのため自分のリスクを知っておくことで、生活を見直す材料になるという考え方は、確かに理解できます。


ただし「リスクが高い」=「発症する」ではありません

重要なのは、
“発症リスクが高い”=“将来必ず発症する”ではない
という点です。

仮に検査で高い数値が出たとしても、
「今すぐ治療や手術が必要」ということにはなりません。
実際には、

  • 食事・運動などの生活習慣の見直し
  • 必要に応じた投薬
    といった“基本的な予防医療”が中心になります。

大切だと思うのは、まず「基本の健診」

僕は、
人間ドックや健康診断で血圧・血糖・脂質などの生活習慣病リスクを把握し、必要に応じて対策すること
が、最も効果的で現実的だと考えています。

また、リスク検査で

  • 「低リスクと言われたから生活が乱れる」
  • 「高リスクと言われて必要以上に不安になる」
    という“行動のブレ”が起こってしまうことも心配しています。

海外では、乳がんのリスクが高いと判断された方が予防的に乳房切除を選択したケースもあります。
もちろん、それぞれの背景・価値観があり、その選択を否定する意図はありません。
ただ僕は、
定期的な検査と、適切な生活改善・治療の積み重ねで多くの病気は十分にコントロールできる
と考えています。


自費検査を否定したいわけではありません

自費検査そのものに価値がない、というつもりはありません。
検査を受けることで、前向きな生活改善につながる方もいます。

しかし僕はこれからも、患者さんにはシンプルに
「リスクが気になるなら、まずリスクを下げる行動を一緒に考えましょう」
というスタンスでお話していこうと思っています。

  • 血圧の管理
  • 体重コントロール
  • 脂質・血糖のチェック
  • 禁煙
  • 運動習慣
  • 十分な睡眠
    こうした“日々の積み重ね”こそが、将来の病気を防ぐ一番の近道です。

おわりに

検査はあくまで“情報”であり、
健康を守るのは、日々の行動です。

自費検査を受けるかどうか迷っている方は、
まずは健診の結果を一緒に確認し、今の生活でできることを考えるところから始めてみてください。
必要があれば、もちろん追加検査についても丁寧にご説明します。

あなたの健康づくりに、少しでもお役に立てれば幸いです。

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