コラム
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1)診断基準自体は大きく変わらない — でも“管理対象”は広がった
変更点:
- 診断の定義(診察室での高血圧:140/90 mmHg以上)は従来通り。
- 一方で、「家庭で朝の血圧が130/80 mmHg以上の人」も積極的に管理の対象として明記され、早めの介入が推奨される方向になりました。
なぜ?:
診察室血圧だけで判断すると、本当の日常の血圧(家庭で測る血圧)とずれが生じることがあります。特に「朝の血圧」が高いと脳卒中や心筋梗塞のリスクが上がるという研究が蓄積しており、家庭での朝の血圧を重視することで本当にリスクの高い人を早めに見つけられるからです。
2)「家庭血圧を優先する」方針の明確化
変更点:
- 診察室での測定よりも、家庭血圧(特に朝の血圧)を重視する立場が強調されました。家庭血圧が治療の判断や目標設定で中心的役割を果たします。
なぜ?:
家庭血圧は“その人の普段の血圧”を反映します。診察室だけの値だと「白衣高血圧(病院でだけ血圧が上がる)」や「マスクされた高血圧(診察室では正常に見えるが日常は高い)」を見落とすことがあります。家庭測定を軸にすると、治療の成功や副作用の管理もしやすく、結果的に脳心血管イベントを減らしやすいというエビデンスが背景にあります。
3)目標血圧の整理と「わかりやすさ」への配慮
変更点:
- ガイドラインは「目標血圧の簡素化・整理」を目指しています。一般的な成人では家庭血圧で 125/75〜130/80 未満 を重視する表現が多く議論されており、高齢者や合併症のある人については個別化(柔軟化)を明記しています。
なぜ?:
目標が細かすぎると現場での運用が難しく、患者にとっても「どこを目指せばいいのかわからない」ことになります。目標をわかりやすくすることで、医師・患者ともに行動(家庭での測定頻度、生活改善、薬の内服)に結びつけやすくする意図があります。一方、高齢者では血圧を下げすぎるとめまいなどの副作用リスクもあるため、個別調整が必要です。
4)治療の“流れ(ステップ)”や薬の位置づけの明確化
変更点:
- 薬物治療の開始や薬剤選択、複数薬併用の考え方がより整理されました。新しい薬(ARBsといった既存薬の組み合わせや、腎保護や心保護の面で期待される薬剤)の位置づけも議論されています。
なぜ?:
治療オプションが増えてきたため、臨床で使いやすくするための「優先順位付け」が必要になっています。適正に薬を組み合わせることで副作用を抑えつつ十分な血圧低下と臓器保護を目指します。
5)高齢者・合併症のある人への「個別化」強化
変更点(ポイント):
- 高齢者(特に75歳以上)や腎疾患・糖尿病などを合併する場合は、“一律の目標”ではなく個別の判断を重視する明記が強調されています。
なぜ?:
高齢者は血圧下降による転倒や倦怠感といった副作用に注意が必要です。大切なのは「長生きする」ために無理なく血圧を下げること。個々の体力・合併症を考慮して、適切な目標を設定することが安全で効果的です。
6)生活習慣介入・デジタル技術の活用を推進
変更点(ポイント):
- 食塩摂取の評価(尿中Na/K比など)や、スマホやアプリを使った血圧管理、遠隔モニタリングなどデジタル技術の実用面での推奨が盛り込まれています。
なぜ?:
毎日の測定を続けること、減塩や運動といった生活習慣改善を続けることが最大のベースです。デジタル技術は“続けやすくする”手段になりうるため、現実的な導入が期待されています。
まとめ
日常的には「家庭での血圧測定」と「生活習慣改善」が今まで以上に重要です。
診断基準(病院での基準)は変わらないが、家庭での朝の血圧を重視して、早めに管理する方針が明確になりました。
目標はわかりやすく整理されつつ、高齢者や合併症のある人は個別に調整するという柔軟性も保たれています。